西側が奥羽山脈の山岳地帯、東側は大崎平野にかかる自然に恵まれ、四季折々に美しい表情を見せる宮城県加美郡色麻町。名取から車を走らせること約40分。小松牧場へと到着しました。
到着すると、事務所からひょこっと顔を出す小松社長。
初対面にも関わらず「ご自由に見て行ってくださいね」と優しい笑みを浮かべるその表情に安堵する筆者でした。

牛舎へ向かう途中にまず目についたのは井戸。一度食べたら忘れられない、こっくり甘く濃厚なナチュリノのミルクジェラート。どうしてここまで美味しくなるのかというと小松牧場でとれる新鮮な生乳があるから。ではどうしてその生乳が美味しいのか。その秘訣は”水”なのです。

牛は1日100ℓ以上の水分を摂るといわれています。生乳のほとんどが水分です。小松社長はもっと美味しい牛乳を作りたい、消費者たちに感動と幸せを与えたい、そういった想いから牛たちへさらに良質な水を飲ませようと考えるようになりました。奥羽山脈から30年かけて辿り着く岩盤の下でせせらぐ水。そして、牧場から西側は銀山温泉まで民家がほとんどないため、生活排水の含まない綺麗な水が流れていると考えたのです。
もともとあった深さ20mの井戸を温泉掘削業車に依頼し、なんと70mまで掘り下げ綺麗な水を汲み上げることに成功しました。
深さ70mから汲み上げる水、それだけでも貴重な水ですが小松社長はさらに沖縄県与那国島(おきなわけんよなぐにじま)でとれる珊瑚が入った濾過器を通すことで天然のミネラルを加えました。
良質で一番美味しい水を牛に与えることにより牛にはもちろん、母乳を飲む子牛や、人の体にも優しい安心安全な生乳を生産することができるのです。

いくつかに分かれた牛舎には、出産を控えるお腹の大きい牛、搾乳が終わって一休みしている牛、お母さんと離れて暮らす子牛、搾乳を待つ牛。
様々な牛がそれぞれの牛舎で過ごしていました。

私たちが牛舎へと入ると牛たちが近づいてきてくれました。
温厚で人懐っこいといわれる牛は、初対面の私の手からも直接稲藁を食べてくれました。
その時感じたのは稲藁の酸っぱい匂い。
小松社長がこだわっているのは水だけではありません。

この酸っぱさは酢酸発酵(さくさんはっこう)した飼料から放たれる匂いで、牛たちの食欲をそそる美味しい匂いでもあるそうです。
発酵によって乳酸、酢酸といった物質が発生し、腐敗菌やタンパク分解菌の活動を抑えるため、飼料の長期にわたる貯蔵が可能となります。また、発酵で生じた有機酸は牛たちにとって重要な栄養源であり、美味しい生乳を生産すると同時に牛たちの健康を維持することにも繋がります。

美味しい餌作りに取り組むことでもりもりと食欲旺盛に食べ、量も質も申し分のないお乳を出してくれるのです。
また、小松社長が取り組んでいるのは【循環型酪農】。値の高い穀物資料は輸入品に頼らず牧草地にトウモロコシや小麦を植えて、自家栽培の穀物飼料作りをスタートさせました。
牛糞も土にして大地へ返し、自分たちの環境下で自然のサイクルを生み出した循環型を大切にしています。

「昨日の夜からお産が始まって今朝2頭の牛が産まれたんだよ」と教えてくれた小松社長。
牧場では日々、命の誕生があるそうです。
大人の牛とは大きさも顔つきも全く違った愛らしい赤ちゃん牛がそこにはたくさんいました。
小松牧場では自社で人工授精を行うことで繁殖実績を向上させています。
全ての牛の首には個別に認識するためのICタグが付いており、脈拍や栄養状態、立ったり座ったりの活動量をデータ化し、

健康状態をリアルタイムで確認できるシステムを導入しています。
このデータにより妊娠中のお母さん牛のお産の兆候を把握することもできるのです。
しかしお産が始まれば夜中であろうと牛の元へと駆けつけなければなりません。
日々何気なく口にしている牛乳や食肉はこういった生産者さんたちの努力や苦労の上で成り立っているという事実を忘れてはならないと改めて感じることができました。

牛舎を進むと頭上で回る大きなファンがあることに気が付きました。これは24時間綺麗な空気を保つ換気のための送風機です。
また、気温が高くなってくると暑さに弱い牛の皮膚には細菌がついてしまうそうです。送風機の風力に乗せて散布した銀イオンにて抗菌し、牛たちを絶えず清潔に保っているのです。
牛たちは人間が思う以上に繊細な動物です。できる限りのストレスを取り除いて過ごせるような日々の環境づくりに努めています。


昨年1年間で80軒、廃業に追い込まれているという県内の酪農家の実情に耳を疑いました。
現在、最も懸念されているのがウクライナ情勢を始めとする世界情勢の変化。それによって直接的に影響を及ぼすのがこの世界の厳しい部分。ウクライナ侵攻に起因する飼料の価格やエネルギーコストの高騰、円安の影響で起こる物価上昇による国内消費の低迷などが原因となっているようです。
競争を勝ち抜いていくには、時代に合ったやり方に柔軟に変えていく必要があると小松社長は言います。
産業副産物を利用したり、牛の血統を変えたり、やれることは全てやるのが小松牧場。
「みんながやることを辞める。逆にみんなが辞めたことをやる」
周りに流されることなく、自分の信念を貫くこと。”指標は自分の気持ち”と言います。
酪農を始めた当時、牛から出る生乳は1日1500ℓでした。これを倍以上に増やさなければ将来的な継続性が難しくなるという状況。牛の頭数を増やさずに倍以上の生乳を生産しようと決意した小松社長はこれまでのデータを見直しながら何度も何度もやり方を変えてきました。飼料や水を良質なものに変え、できるだけ牛のストレスを軽減させられるような環境づくりに力を入れました。一頭一頭の牛に愛情をかけることも忘れず、少しずつ乳量を上げていき、20年以上かけて目指した目標の数値にまもなく達成する見込みだということでした。

それでも廃業を覚悟したことがあるのは小松社長も同じでした。何度も挫折し、顔を上げ、また挫折し、顔を上げ・・1歩進んで3歩下がるのが当たり前の世界。柔らかく温和な表情からは考えられないほど、今までたくさんの向かい風に立ち向かい、足掻き続けてきたそうです。それでも頑張れたのは目の前で生きる牛たちがいたから。失敗と成功を繰り返し、少しずつフラットな考え方ができるようになった小松社長が最近よく使うワードを教えてくださいました。
それは「どうせうまくいく」
決していい加減な発言ではなく、できることを日々模索して見つければ全てやり尽くし、幾度となく苦楽を乗り越え、達観した小松社長だからこそ生まれる言葉であり、関わる人々に安心感と希望を与えてくれる言葉でもあるのです。
穏やかで優しい表情とは裏腹に、今回のインタビューでその心の奥底にある強い信念と熱い情熱を確かに感じることができました。
店舗ではもちろん、全国での催事やオンラインショップでも人気のナチュリノのミルクジェラートは、食べた人みんなを笑顔にし、一度食べたら忘れられない魅力があると言います。
小松社長の経験と牛達に注ぐ愛情こそがナチュリノで人気を誇るミルクジェラートの秘訣なのです。



ナチュリノでは小松牧場さんの生乳を使用したジェラートを販売しております。
店頭、通販サイト、どちらにもございますので気になった方は是非お召し上がりください◎